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シネマ散歩
映画「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」 命を懸けた、ナチスへの抵抗

21日からkino cinema横浜みなとみらいで上映。
ナチスに監禁された男性が、人間の尊厳を奪われる中で、1冊の本によって自らの精神を必死に維持し、生き延びようとする凄絶(せいぜつ)な姿を描く。
ウィーンで暮らすヨーゼフ(オリバー・マスッチ)は、公証人として貴族たちの財産を管理していた。だが、ナチス統治下のドイツがオーストリアを併合した時に、秘密警察に連行される。ホテルの一室に監禁され、管理していた銀行の預金番号と暗証番号を明かすよう拷問されるが、拒否し続けた。
肉体的な拷問だけでなく、ナチスは巧妙にヨーゼフを苦しめる。文学と音楽を愛する彼にとって、何の書物も手に取れず、誰とも会話ができない状況が続くことは、これ以上ない苦痛だ。
ある日、監視の目を盗んで手に入れたのがチェスのルールブックだった。ひそかにパンで駒を作り、浴室のタイルの床をチェス盤に見立て、ゲームにのめり込む=写真。それが狂気に打ち勝つ唯一の手段だった。
今、自由になったヨーゼフの記憶は混乱している。ニューヨークに向けて乗り込んだ船で、チェスの世界王者と対戦するが、預金番号を吐けと迫る秘密警察の顔が重なる。観客は、彼の痛々しい心の傷を突き付けられる。
原作はオーストリア生まれのユダヤ人作家ツバイクの「チェスの話」。亡命後の1942年に同作を書き上げ、自死を選んだ。ナチスへの命をかけた抵抗とされている。
監督/フィリップ・シュテルツェル
製作/ドイツ、1時間52分
2023年7月20日公開 | 2023年7月21日神奈川新聞掲載
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