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映画「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」 語り継がれるべき歴史が凝縮された必見の作品

28日からヒューマントラストシネマ有楽町などで上映。
フランスで人工妊娠中絶を合法に導いた政治家シモーヌ・ベイユ(エルザ・ジルベルスタイン=写真)の生涯を映画化。弱い立場に置かれた女性をはじめ、社会の周縁に追いやられた人々のために奔走した闘いの軌跡が、鮮烈な映像とともに描かれる。
1927年、南仏のユダヤ人家庭に生まれたベイユの幼少期は幸せに満ちていた。平穏な日々が一転、16歳でアウシュビッツ強制収容所へと送られる。全裸で髪を刈られ、衰弱する母を放置され、尊厳を根こそぎ奪われた。「死の影を引きずる」壮絶な体験が、人の苦しみに寄り添う後の活動につながっていく。
晩年のベイユが自伝を書こうと半生を振り返るシーンから映画は始まる。幼少期やホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の惨状、信頼で結ばれる夫やわが子との関係、保健大臣や女性初の欧州議会議長として行った力強い演説。時代が前後しながら場面が転換し、彼女の記憶を共にたどる心地を覚える。
刑務所の受刑者や薬物依存症者とじかに向き合う誠実なまなざしが胸を打つ。「不幸は定めじゃない」「生きて」。極限の中で命をつないだからこそ放たれるその言葉が重い。
「過去の出来事から学び未来へと進む」。現代にもはびこるレイシズムや外国人嫌悪を憂うベイユはこうも言った。語り継がれるべき歴史が凝縮された必見の一作だ。
監督・脚本/オリビエ・ダアン
製作/フランス、2時間20分
2023年7月28日公開 | 2023年7月28日神奈川新聞掲載
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