気になる
シネマ散歩
映画「インスペクション ここで生きる」 ゲイ男性に向けられる憎悪、差別、暴力

4日からkino cinema横浜みなとみらいなどで上映。
主人公は黒人のゲイ男性。セクシュアリティーを理由に社会ののけ者のように生きながら、自らの居場所を切り開く。監督の実体験を投影したリアルな心理描写に、心を揺さぶられる。
イラク戦争が長期化した2005年の米国。ゲイであることから母親に拒絶されたフレンチ(ジェレミー・ポープ=写真右)は、16歳から10年の間、路上で暮らしていた。生き抜くために残された唯一の選択として、海兵隊への入隊を志願。「軍服姿で死ねれば、こんな俺でも英雄になれる」
壮絶な訓練の日々が待ち受けていた。「怪物」を育てるのが目的と言う教官の下で猛烈なしごきを受け、さらに、ゲイであると周囲に知られ激しい憎悪にさらされる。有害な男性性が支配するゆがんだ世界で理不尽な扱いに耐え忍び、自身を奮い立たせていく。
母親の同性愛嫌悪がすさまじい。厳格な宗教観がその背後にあり、彼女自身にも黒人のシングルマザーとしての苦難があった。どれだけ否定されようと、「母さんとの関係を絶対諦めない」。揺るがない愛と信頼がやるせない。
組織に残る小さな良心に支えられた彼もまた、マイノリティーとしてさげすまれる仲間を励ました。ひりひりとした痛みが伴うが、目を背けてはならない差別と暴力の実情が描かれる。
フレンチの複雑な心情を捉えたポープの演技が素晴らしい。自己を貫くその姿が胸に迫った。
監督・脚本/エレガンス・ブラットン
製作/米国、1時間35分
2023年8月3日公開 | 2023年8月4日神奈川新聞掲載
オススメ記事⇩
この記事に関連するタグ
シェア、または新聞を購入する
- LINE
- URLコピー
- 掲載日付の
新聞を買う
推しまとめ
かながわの地域ニュースなら
「カナロコ」

「神奈川」の事件・事故、話題、高校野球をはじめとするスポーツなど幅広いローカルニュースを読むなら、地元新聞が運営するニュースサイト「カナロコ」がおすすめ。電子新聞が読めたり、便利なメルマガが届く有料会員もあります!