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展覧会
グリコのおまけに見る時代の遷移 神奈川近代文学館「おまけ」と「ふろく」展
- 神奈川近代文学館(横浜市中区)

お菓子のおまけといえば、ランナーがゴールインする姿が描かれた真っ赤なグリコのパッケージを思い浮かべる人も多いだろう。江崎グリコの創業者・江崎利一(りいち)は、子どもの健康を願い、キャラメルにグリコーゲンを加えた栄養菓子グリコを製造した。
グリコが発売された1922(大正11)年当時、キャラメル市場は森永製菓と東京菓子(現・明治)が二分していたため、江崎は販売や宣伝の方法に試行錯誤を重ねた。他社製品と差別化し、魅力を高める工夫の一つがおまけだった。
人気を集めた初期のおまけには、偉人や動物をかたどった金属製のメダルとバッジがある。開封するまで中身が分からず、種類も豊富なため、次はどんなおまけが出てくるかと、子どもたちは期待を込めて買い求めたことだろう。お菓子のおまけといえばグリコ、という認識が徐々に広まっていった。
ただし、江崎は付属品の意味合いがある「おまけ」ではなく、グリコと等価の「おもちゃ」だと述べ、グリコで丈夫な身体を、おもちゃで知識や健やかな心を育むことを期待したのだという。

35(昭和10)年、グリコのおまけ作りを志願して、宮本順三が入社。宮本が手がけたおまけは、郷土玩具から着想を得た親しみやすい木製のものから、金属製のシャープな自動車まで幅広く、多様なおまけが子どもたちを魅了した。
ほどなくして37年に日中戦争が開戦。39年に第2次世界大戦が勃発し、やがて太平洋戦争へ突入するころには深刻な資材不足でおまけが消え、グリコも製造中止となった。
戦後、グリコの製造が再開されると、おまけも復活を遂げる。戦前と同様のおまけの中に、プラスチック製のものが見られるようになった。50年代には「三種の神器」のテレビ、冷蔵庫、洗濯機を模したもの、60年代には鉄人28号のフィギュアなども登場。
子どもの指先ほどの小さなグリコのおまけを見つめると、その素材やデザインに時代ごとの流行や世相の移り変わりを読み取ることができる。(神奈川近代文学館展示課・秋元 薫)
◆展覧会情報
「『おまけ』と『ふろく』展」は9月24日まで、神奈川近代文学館(横浜市中区)で開催中。一般500円ほか。月曜休館(18日は開館)。問い合わせは同館、電話045(622)6666。
2023年8月21日公開 | 2023年8月21日神奈川新聞掲載
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