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ミカンの濃厚な香りと甘み引き出す 地域独特の製法を続け300年のあきさわ園(小田原市)
- あきさわ園(小田原市)

温暖な気候と、水はけが良く海風が心地よく通る丘陵地―。ミカン栽培に適した小田原市明沢地区で300年以上続くかんきつ農家「あきさわ園」。代々引き継ぐ土蔵で、収穫後、品種や状態にあわせ1~4カ月貯蔵し、酸味だけを飛ばす地域独特の製法を続ける数少ない農家だ。

ミカンを木箱に並べ、天井近くまである棚に入れる。電気は使わず、外気を遮断する10センチの厚みのある土壁と、床の通気口から通る空気の調整で湿度や温度を管理する。手塩にかけたミカンにさらに一手間かけることで、濃厚な香りと甘みを引き出す。現在は、みずみずしく爽やかな酸味の極早生ミカンの出荷が始まり、12月ごろから4月ごろまで貯蔵ミカンが楽しめる。

約20種のかんきつ類を中心に、キウイフルーツ、下中タマネギなどを栽培する同園。代表を務める秋澤史隆さんは、コンセプトに「欲しい未来は自分たちで創造する」を掲げる。農業大学時代、所属する部活を通してアフリカや南米など、多くの地域で農業を経験。卒業後、アメリカでの農業研修を経て、家業を継ぐことを決意した。地域に植わる樹齢300年のミカンの樹や、先代たちがつないできた景色を前に「この里山でしかできないことを、自分がやらなくては」と使命感を抱く。

2020年には、ワークショップ形式で土蔵と同じ伝統工法で加工所を設立。摘果ミカンや出荷が難しい果物をジュースやジャムに加工し、取引先の幅も広がった。このほか食育活動や農業体験、商品開発と、活動は多岐にわたる。研修生だけでなく、学生や企業研修、消費者向けのイベントなど、受け入れる相手もさまざまだ。「暮らしの根幹である食を支える農業は、その価値をもっと見直されるべきではないか。持続可能なものにするためにも、多くの人と関わりながら、新しい価値の創造をしていきたい」


お薦め品
・ミカン(1キロ) 350円~
・ジュース(180ミリリットル) 350円~
・ドレッシング(200ミリリットル) 650円~
ここで買える
あきさわ園:小田原市沼代1264の4。JR二宮駅からバスで坂呂橋下車15分。要事前予約。電話0465(43)0305。
※魚介類や野菜など生鮮食料品の価格・種類は、水揚げ量や収穫量、天候などの影響で変動します。
2023年10月5日公開 | 2023年10月5日神奈川新聞掲載
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