気になる 横浜のシネマ・ジャック&ベティで映画「シェアの法則」 事情を抱えた人々が助け合う姿を、温かく捉える
- シネマ・ジャック&ベティ(横浜市中区)

シェアハウスを営む夫婦と、さまざまな背景を持つ住人らの関わりと変化を描く映画「シェアの法則」が、21日から横浜のシネマ・ジャック&ベティで上映される。横浜市出身の久万真路(くま・しんじ)監督(55)は「同じ世代の皆さんと問題を共有し、大人が見ても楽しめる映画を作りたかった」と、多様な事情を抱えた人々が助け合う姿を、温かく捉えた。
元になったのは、岩瀬顕子の脚本で劇団青年座が上演した同名の舞台。映画化に当たり、舞台では登場しなかった妻・喜代子の温かな人柄や住人たちとの交流を描き、喜代子の入院を機に管理人となる夫・秀夫との対比を際立たせた。
「秀夫さんは自分の価値観が確立した昭和の男。人生経験が豊富であればあるほど、自分を正しいと思う気持ちは修正できない」と久万。そんな秀夫が、立場も年齢も違う人々と触れ合う中で、ひとりよがりの価値観では生きていけないことを痛感するようになる。
「特に自分の身内については、違いを受け入れにくいのではないか。最後の場面では、彼が本当に変わった姿を感じてほしい」

秀夫を演じたのは、「踊る大捜査線」シリーズや「ザ・マジックアワー」などで名脇役として活躍する小野武彦で、映画初主演となる。「誰よりも早く現場に来るなど、仕事に対する姿勢には頭が下がる。その前に80歳には見えないですね」とほほ笑む。
喜代子役に宮崎美子、シェアハウスの住人でキャバクラで働く美穂役に貫地谷しほり、夫妻の息子・隆志役に浅香航大ら実力派俳優がそろった。
中国からの出稼ぎ労働者に対する誤解や、性的少数者への偏見といった現代社会ならではの事象も盛り込んだ。「岩瀬さんは問題意識がすごく高い。僕自身、今作で初めて知ったこともあった」と振り返る。

コミュニケーションをテーマにしたのは、新型コロナウイルス禍の自粛期間中に「他人に密に関わることで何かに気付ける作品は、今しか作れないのではないか」と思ったからだ。
6歳まで横浜市戸塚区で育ち、「家から富士山が見えた」などの記憶がある。高校時代を香川県で過ごし、県立高松工芸高校で8ミリカメラで映画を自主製作する先輩に誘われ、自分も撮るようになった。
「若い人に見てほしい作品もあるが、50代以上の人が楽しめるものが日本では少ない。映画館にも足を運ばれなくなったが、面白い作品がラインアップとしてそろってくれば、買い物ついでにスクリーンで見ようかなと思ってくれるかも。私たちの年代も楽しめる企画に関わっていきたい」
2023年10月20日公開 | 2023年10月20日神奈川新聞掲載
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