とれたて
貯蔵ミカン
土壁で酸味分散、濃厚味に
- 2017年12月8日 神奈川新聞掲載

小田原市東部にある曽我地区の畑を訪ねると、富士山を望む斜面全体がオレンジ色に染まって見える。ミカンのわせ品種「望月」や「ゆら」が終盤となり、主力の「大津」が始まったばかり。家族5人が総出で収穫に精を出しているところだった。

杉﨑農場の6代目、杉﨑翔太さん(28)が「一番見せたい」というのは、4棟ある土壁の貯蔵庫だ。天井近くまである棚に木箱があり、収穫されたミカンが納められている。土壁で温度や湿度を保ち、通気性を良くした倉庫に置くことで果実の水分を調整、酸味を分散する。酸が強い関東のミカンをおいしくする技術だが、土壁の職人も少なくなり、近年は珍しくなっている。
貯蔵期間は、わせ品種で1~2週間、「大津」などが2カ月と品種によって異なる。「杉崎系」と呼ばれる品種は、約4カ月と一番長く、3月が食べごろだ。杉﨑さんは「市場でアピールできる技術」と胸を張る。

「貯蔵ミカン」を、採れたてのものと食べ比べてみた。採れたてのミカンも酸っぱくなく、爽やかな香りで気持ちよく喉を潤してくれる。「貯蔵ミカン」は、袋が柔らかく、濃厚なミカンの味がやみつきになる。子どものころ、こたつに皮の山を築いた「あの味」だ。
杉﨑さんは新潟県出身。小田原で杉﨑家の長女・友美さん(29)に出会い結婚した。先に就農した友美さんの力になりたいと、未知の世界に飛び込んで2年になる。家族だけで過ごす生活に不安もあったが、通勤時間がかからないこの仕事が気に入っている。農業は身につけなければならない知識や技術が多く、収穫高や売り上げといった成果が数字で表れる。「やりがいを感じています」と杉﨑さん。伝統ある農場に新風を吹き込んでいる。

※魚介類や野菜など生鮮食料品の価格・種類は、水揚げ量や収穫量、天候などの影響で変動します。
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