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気になる 水、光、月がモチーフの新作映像 KAAT展覧会「志村信裕展 游動」

水、光、月をモチーフにした作品が並ぶ会場(撮影:加藤健)=KAAT
水、光、月をモチーフにした作品が並ぶ会場(撮影:加藤健)=KAAT

 身近な日用品や風景などを題材に、自然や事物のありようをとらえる映像作品を制作する現代美術家、志村信裕の展覧会「志村信裕展 游動(ゆうどう)」が、KAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で開催中だ。「水」「光」「月」をモチーフにした新作の映像インスタレーション8作品を公開。志村は「自然の中にある要素を取り入れた作品を通じ、それぞれの記憶や感情を紡ぎ出してほしい」と語る。

 志村は武蔵野美術大学大学院で映像を学び、「光を当てる」をテーマにインスタレーションを制作。横浜美術館や黄金町バザールなどで作品を発表してきた。今展は通常と異なり劇場での展示。「劇場という暗く静かな空間を生かし、鑑賞者が没入できる世界を作り出した」と話す。

 作品「Dance」は、柔らかい光に包まれた木もれ日の映像をたわんだカーテンに投影した。劇場の重い扉を開けると、無音の暗闇の中に浮かび上がる白いカーテンが目に飛び込み、静寂の中、優しい光に呼び込まれるような感覚が生まれる。

 木枠のすりガラスの窓に無数のミズクラゲが映し出され、幻想的な世界が広がる「玻璃(はり)の夢」は、宮沢賢治の詩「青森挽歌(ばんか)」の〈こんなやみよののはらのなかをゆくときは/客車のまどはみんな水族館の窓になる─〉の一節から着想した。古い窓ガラスが内と外を分ける境界線になり、真っ暗な海の中から月のようなクラゲが見る人を照らしている。クラゲは漢字で「海月」と書き、昔の人は海に浮かぶクラゲを月に見立て、その感性に共感したという。「古くから詩人たちは水と光と月を題材に過去のことや違う場所のことを詠んできた」

 「400平方メートルという広い空間を回遊するように自由に動き、さまざまな角度で見てほしい」という狙いから、座って鑑賞できる作品もある。「Blue Hour」は、空が濃い瑠璃(るり)色に染まる夜明け前をイメージした四角いベンチ。そこに投影されているのは、太陽の光を水槽に通して生まれた虹だ。劇場の青い照明を重ね、赤い波長を抑えている。色の波長と揺れる水の波長が交わり、この空間ならではの作品になっている。


木もれ日の柔らかい光で古書を包み込む「光の曝書」
木もれ日の柔らかい光で古書を包み込む「光の曝書」

 シリーズ作品「光の曝書(ばくしょ)」では、俳人高浜虚子の次女、星野立子の句集「鎌倉」から月の句を選んだ。本を虫干しする行為「曝書」から生まれた作品群。古書店で見つけた一冊から〈月代に雲美しくとゝのへば〉のページに木もれ日の優しい光を映し出した。

 展示の最後の作品「Jellyfish」は、ゆらゆらと1匹のクラゲが優雅に泳いでいる。スクリーンに使用されているのは舞台稽古で使う鏡。観客がこの作品の前に来ると、鏡に自分の姿が映り込み会場全体と重なる。


「会場全体を俯瞰(ふかん)して見ることができるのも、この劇場ならでは」と語る志村信裕=KAAT
「会場全体を俯瞰(ふかん)して見ることができるのも、この劇場ならでは」と語る志村信裕=KAAT

 「これまで発表してきた美術館や屋外と違い、劇場という暗い空間だからこそ表現できた」と志村。映像と照明に光が共存することで、化学反応を起こす実験的な展示構成にもなったという。「水、光、月が語りかける『游動』を感じ取ってほしい」

 10月8日まで。一般800円、学生・65歳以上500円、高校生以下無料。月曜休み。問い合わせは、同劇場、電話045(633)6500。

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