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ダウン・タウン・ブギウギ・バンド◆港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ

作詞/阿木燿子・作曲/宇崎竜童
作詞/阿木燿子・作曲/宇崎竜童

愛への珠玉の回り道

 度々、というか年に一回、出させていただいているクイズ番組がありまして、それも決まって新春一発目。え? 自分を知っている方なら怪訝(けげん)に思うかもしれません。何せ歌手時代につけられたキャッチフレーズが「生きながら死んでいる男」、そんな者がなぜおめでたいお正月に? しかしそれはスタッフ皆さまの、あえて苦みをカクテルする、ふきのとう味噌(みそ)のごとき粋な嗜(たしな)みと解釈しております(違うかな)。

 しかしこの番組、そもそも解答席が毎回ごった煮のようなすごい取り合わせ(失礼)。自分が出演した回など、御歳(おんとし)86歳のコメディエンヌ、小桜京子さんが横にいるかと思えば、その隣には元ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの“泣きのギタリスト”和田静男さん! リアルあんたらなんなのさの世界!(こらまた失礼)というわけで、今回は港のキョーコ…じゃなかった「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」(1975年・昭和50年)の巻であります。変な書き出しですみません。

 しかしこの曲、そんな陰と陽が隣り合わせだったともいえる逸話が。妻の阿木燿子さんから詞を授かるや、「これこそが俺の歌いたい世界だ!」と感動した宇崎竜童さん。喜び勇んで作曲に取りかかるも♪一寸(ちょっと)前なら憶(おぼ)えちゃいるが一年前だとチト判らねェなあ…
 あ、あれ? 底に響くのは植木等さんの高らかな哄笑(こうしょう)ばかり。そう、どうしても「スーダラ節」のメロディーと酷似してしまうのです。これでは、主人公がベンチでごろ寝して終わってしまいかねません。苦悩する宇崎さんへの助け舟は、海を越えて遠い周波数を伴い閃(ひらめ)きました。


横須賀市、どぶ板通り商店街のバー。歌詞では「ハマから流れて来た娘」は「あそこの隅のボックス」に座っていた(1978年、神奈川新聞社撮影)
横須賀市、どぶ板通り商店街のバー。歌詞では「ハマから流れて来た娘」は「あそこの隅のボックス」に座っていた(1978年、神奈川新聞社撮影)

 子どもの頃、いつも耳を傾けていたFEN、ラジオの箱から流れてきたカントリーウエスタンのトーキングソング。これだ。かねて「愛してる、と書いたら終わり。大事なのはそれを書かずにどう伝えるか」という通念を抱いていた宇崎さんにとって、社会の底辺に生きる人間たちのリアルな声は、子猫を愛するヨーコの純粋な瞳をより儚(はかな)く浮かび上がらせました。全編せりふで紡ぐことで、愛への珠玉の回り道が鮮烈に照らし出されたのです。

 アルバム用の曲が足りないと切羽詰まった宇崎さんが借りた奇跡の猫の手こそが妻の燿子さんだったわけですが、それは広告チラシの裏に鉛筆で、コタツの上にぽんと置かれていたのだとか。

 そんな日常の隙間から生まれた、阿木さんの分身ともいうべきヨーコが、B面の底辺から国民の尋ね人となり、言葉の魔術師のような阿久悠さんをして「あれにはやられました」と舌を巻かせ、言葉の呪術師のような桑田佳祐さんをして「僕の愛すべき歌謡曲は港のヨーコ以来出ていない」と言わしめたのです。


絵/タブレット純
絵/タブレット純

 そう、歌謡曲。いくら型破りであれ、型がなければただのかたなし。根底に愛が一筋通ってなければロックンロールではない、それがダウンタウン(下町)からのメッセージのように思えます。

 ぼくも芸人として、かたなしになっていないか自問する日々ですが、先日ある方に、「千と千尋の神隠し」に出てくる「カオナシ」に似てるねと言われました。あぁ、「やっぱり生きながら死んでいる男」。


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