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映画「グッバイ・クルエル・ワールド」 強盗団の1人を演じた斎藤工が語る映画の魅力

互いに素性を明かさないまま手を組んだ一夜限りの強盗団が、暴力団から大金を奪う顚末(てんまつ)を描いた映画「グッバイ・クルエル・ワールド」(大森立嗣監督)が、9日から横浜ブルク13などで上映される。強盗団の1人を演じた斎藤工は、過激な描写に臆することなく挑んだ作品に「今だからこそ感じられる爽快さがあるのではないか」と語った。
殺人もためらわない犯罪者を演じた斎藤。頰や首に入れ墨を施し、すぐに切れる粗暴な男は強盗団でも一番の危ない存在だが、「危険とはいえ、はかなくもろく。自分とは遠いと一言でくくれないくらい、心根の部分では理解につながる何かを持ったキャラクターだった」と共感を寄せる。
元暴力団員の男(西島秀俊)ら強盗団のメンバーは、大金を必要とする事情をそれぞれ抱えている。執念深く追ってくる暴力団、そこにつながっている刑事(大森南朋)も絡み、金と生にしがみつく人間の姿が赤裸々に描かれる。
斎藤は同作を「希望の物語」だという。「ならず者たちではあるが、上は見なくても前は見る、というか、バトンみたいなものをつなげている。ラストも、この作品の中にちりばめられた希望の一つだという気がした」と明かす。
最近の映像作品について「コンプライアンスでくるんでしまうと、代わり映えのしない、ただ通過していってしまう娯楽になる時代。下手すると、気にするということをし過ぎて、表現が入り口からやすりにかけられている感じになってしまう」との懸念を抱く。

その上で、暴力的な場面を描いた大森監督の狙いを「時代の抑圧みたいなものを突き破ることをテンションにした映画だと思う。そのある種の爽快さは、一つの映画のジャーナリズムとして正しい」と見る。
作品の特色の一つに、大音量で流れるソウルミュージックがある。黒人音楽が人種的に虐げられた歴史の中から生まれていることを踏まえ、苦しみを抱えて生きる人々に「寄り添った作品ではないか」と説く。「子どもには苦いけれど、苦みがうまみというか。ブラックコーヒーのような作品」だと評する。
今年、監督として既に4作の長短編を撮影したという。「監督をしたい、主演をしたい、という気持ちはさらさらなくて。製作環境を整えたり、中堅で才能があるのになかなか日の目を見ない監督のサポートをしたりするのが、自分の天命なのかな」と、作品を世に出すための自分の立ち位置を探っている。
パワハラやセクハラといった映画業界の悪弊が明らかになっている現在。変わらなければ生き残っていけないという全体の認識はあるが、「既得権益というか、ゆっくりと元に戻そうという大きなうねり」も感じているという。
「一度ゼロにして次世代の人が一から構築した方がいいんじゃないかという思いもある。ただ、大森監督のような素晴らしい映画人がたくさんいらっしゃるので、そういう方たちの私見が未来への希望だと思う」
2022年9月9日公開 | 2022年9月9日神奈川新聞掲載
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