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本條秀慈郎さんに聞く 追求し続ける三味線の可能性


 高校時代に出合った三味線の魅力に取り付かれ、新しい表現を一心に追求し続けてきた。坂本龍一や藤倉大ら、日本を代表する作曲家に自ら委嘱した楽曲を演奏するほか、オーケストラやダンサーなどとも共演。聴く者の魂を揺り動かす音色は海外でも高く評価され、現代邦楽の世界をけん引している。

 11月、杜(もり)のホールはしもと(相模原市緑区)での公演は、これまでと異なり古典的な作品中心のプログラム。明治から昭和初期に活躍した音曲師・立花家橘之助(きつのすけ)の浮世節「たぬき」や端唄「我がもの」など、民衆に愛されてきた楽曲の弾き歌いに挑む。「これぞ三味線というスタンダードな内容ですが、器楽曲を中心に演奏してきた自分にとっては挑戦的なプログラム。現代曲と伝統的な楽曲をひとつの大きな流れの中にあるものとして聴いてもらいたいですね」と意欲を見せる。「ここ数年は、長く歌い継がれてきた楽曲やその奏法、日本の伝統文化に意識が向いてきている。そんな時にこのプログラムに取り組ませてもらえるのはうれしいです」


「本條秀慈郎 三味線演奏会」11月6日午後2時開演。全席指定3800円。問い合わせはチケットMove☎042(742)9999
「本條秀慈郎 三味線演奏会」11月6日午後2時開演。全席指定3800円。問い合わせはチケットMove☎042(742)9999

 歌に本気で取り組み始めたのは2020年。「作曲家の一柳慧さんのオーダーで、弾き歌いをすることになったことがきっかけ」と振り返る。「オーケストラとの共演ということもありプレッシャーを感じましたが、今となっては素晴らしいチャンスをいただいたと思います」

 歌の稽古は演奏法にも影響を与えた。「力みが抜けて無理がなくなった。曲へのアプローチも変わってきた実感があります」。古典に取り組むことで、新しい作品が力を増す感覚もあるという。11月の公演では、沢井忠夫さんの「誦(しょう)」を久々に披露するが、「以前とは違う演奏ができたらいい。変化すること自体を楽しんでいきたいんです」と目を輝かせる。

 師匠の本條秀太郎さんは既存の枠組みにとらわれず、三味線音楽の興隆に力を尽くしてきた先駆者で「三味線にも歌にも、そして人間そのものにも強く引き付けられる、魔力のようなものがある先生」。極限まで芸を極めた今もハングリー精神を忘れない師匠の姿は、新しいことに挑戦し続ける指針となっている。

 今後は声や歌との組み合わせについても新たな表現を追求したいという。「高橋悠治さんの『ハムレット生死』という弾き語りの曲を演奏した時、芝居的な要素も含めて新鮮な刺激があった。もっとこの楽器の可能性を引き出し、高みに引き上げていきたいんです」



ほんじょう・ひでじろう
三味線演奏家。1984年生まれ。栃木県出身、川崎市在住。桐朋学園大学短期大学部芸術科音楽専攻日本音楽専修卒業、同専攻科、研究生修了。第25回出光音楽賞、第70回文化庁芸術祭賞新人賞、第72回芸術選奨文部科学大臣新人賞など受賞多数。2018年に文化庁文化交流使として世界各国で演奏会を開催。21年には一柳慧さんの県民ホール・県立音楽堂芸術総監督就任20周年記念プロジェクト「Toshi伝説」に出演した。

記者の一言
 川崎市多摩区にお住まいの本條さん。「岡本太郎美術館や庄野潤三の家があって、面白い場所。生田緑地が近いのですが、自然が豊かで、タヌキが出ることもありますよ」と愉快そうに印象を語ってくれた。
 コロナ禍をきっかけに「すっかりはまってしまった」という落語についても盛り上がった。今年は古今亭志ん輔師匠と動画配信で共演。怪談話「もう半分」では三味線の音色が話の世界観を奥深いものにしており、鳥肌が立った。落語の背景音にとどまらない三味線の存在感にうならされた。

2022年9月12日公開 | 2022年9月11日神奈川新聞掲載

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