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KAATで上演「スカパン」 喜劇に孤独が際立つ

  • KAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)

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串田和美(右)と小日向文世。それぞれの息子も出演し、2組の親子共演となった=KAAT神奈川芸術劇場(撮影・山田毅、提供・KAAT)
串田和美(右)と小日向文世。それぞれの息子も出演し、2組の親子共演となった=KAAT神奈川芸術劇場(撮影・山田毅、提供・KAAT)

 その場かぎりの声色と表情で世渡りするお調子者は、だからといって軽薄とは限らない。笑いを交え、永久不変と信じられている常識をひっくり返す難事をやってのけるのが、道化の役目である。

 KAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で10月26~30日に上演された「スカパン」で、俳優の串田和美(潤色・演出・美術も)が、そんな道化を具現化した。原作は、フランスの劇作家モリエールが1671年に発表した喜劇「スカパンの悪巧み」。

 港町で召し使いとして働くスカパンは、主人の子息ら2人に懇願され、親の意に反する恋を成就させるため一肌脱ぐ。串田は28年間、8度にわたりスカパンを演じてきた。その軽口、色目を使うような視線、卑屈さがにじむ上体の揺れは、役でなくもはや実存だ。

 対峙(たいじ)する2人の親を演じるのは、28年前の初演で共演した大森博史と小日向文世。成り金の横柄で下卑た感じが絶妙だ。スカパンは彼らをなだめすかし、時に意趣返しも織り交ぜ、挙げ句に金をせしめてしまう。その手練手管に胸がすく。

 本作の真価は、スカパンの孤独な夕食の場面だろう。暗い野外に独り片膝を突き、苦り切った表情で何かを口に運ぶ。ほんの数秒の場景ながら、眉間の深いしわが浮き上がって見えた。彼は子息らと共闘するが、それは仲間を意味しない。持てる者と従僕の間には厳然とした壁があることを、この数秒間が物語る。

 原作と異なり、串田版スカパンの結末は大団円ではない。悲しいが、権威を笑いながらも崩すには至らない道化の無力感は、現代社会に重なって胸を突く。それなのに不思議と温かさも残るのは、演劇というものが弱者の側に立つからだ。

2022年11月16日公開 | 2022年11月16日神奈川新聞掲載

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