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辻原登さんに聞く 芥川賞作家を創作に駆り立てる原動力とは?

辻原登さん
辻原登さん

 現実と幻想のあわいを行き来する豊かな物語世界と、心を揺さぶる叙情性の高い描写は読むものを魅了する。デビューから37年となる今年、文化功労者に選ばれた。

 歴史活劇から犯罪小説まで、手がけるジャンルは幅広いが、創作の原動力となっているのは「表現する喜び」。「愉楽があるから続けてこられたのだと思います」と振り返る。

 5月に発表した「隠(かく)し女(め) 小春」は、女性を模した等身大の人形と一緒に暮らす男性が生身の女性に恋をしたことから、不可解な事件が巻き起こるサスペンスだ。

 ミステリアスな人形が物語の核になっているが、登場人物たちがそれぞれ隠し持つ秘密もストーリーを大きく動かしていく。「人間の動機や背景という謎を解いていくことがドラマを生む。そういう意味で、すべての小説はミステリーと言えるかもしれません」


「隠し女 小春」(文藝春秋、1760円)
「隠し女 小春」(文藝春秋、1760円)

 同作には2012年から館長を務める神奈川近代文学館(横浜市中区)も登場する。

 今年は吉田健一、ドナルド・キーン、川端康成の企画展を行い、話題となった。掲げているのは「『近代』や『神奈川』、周年にとらわれず、その時に注目するべき作家を取り上げる」こと。それに応え、質の高い企画を作り上げる職員たちに信頼を寄せる。「学校に展示用のパネルを貸し出すなど、若い人が文学に興味を持つような工夫をしてくれていて、ありがたいと思っています」

 教育者としての顔も持ち、これまで東京大学や関西大学などで文学の講義を行ってきた。中でも東海大学では、1993年から2019年まで長く学生を指導。「僕自身は研究機関に背を向けて独学で学びを深めてきたのですが、その頃の経験をもとに大学でカリキュラムを組んだ。人生は面白いものだなと思ったし、学生たちを文学の世界に誘惑するのは楽しかったです」と笑う。



 学生たちには読書の重要性を繰り返し語り続けてきた。「ドストエフスキーのように、身体と精神の動乱期に読まないと本質的に理解したことにならない作品もある。本を読み、社会経験を重ねて、それでも小説を書きたい気持ちがあるなら、その時に書けばいい」

 大学教育の現場では実学志向が強まる。文学や教養を学べる学部が減っていることへの危機感は強い。「文学的世界に身を投じることで、自由や平等とは何かを深く理解できる。そこで獲得したヒューマニズムが、生き方の核になるはずなんです」



つじはら・のぼる
 作家。1945年和歌山県生まれ、横浜市保土ケ谷区在住。90年「村の名前」で芥川賞、99年「翔べ麒麟(きりん)」で読売文学賞、2000年「遊動亭円木」で谷崎潤一郎賞、05年「枯葉の中の青い炎」で川端康成文学賞など受賞多数。07年神奈川文化賞、12年紫綬褒章。09年から2年間、神奈川新聞文芸コンクール短編小説部門の審査員を務めた。神奈川近代文学館館長。

記者の一言
 神奈川近代文学館で定期的に行われている「かなぶん連句会」の開催日に取材の時間をいただいた。連句会とは、参加者が「五七五」の長句と「七七」の短句を交互に詠んで、ひとつの作品を作っていく「座の文芸」。楽しそうに参加者の作品を吟味する辻原さんの姿に、講義を受けることができた学生たちがうらやましくなった。

 「隠し女 小春」には野毛に実在するワインバーが登場する。辻原さん行きつけのお店だそうで「お酒も食べ物も絶品」との言葉は本当だった。またお邪魔します。

2022年12月6日公開 | 2022年12月4日神奈川新聞掲載

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