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ただ観客のため、歌うように弾きたい フジコ・ヘミング、県民ホールで1月にコンサート
- 県民ホール(横浜市中区)

ピアニストのフジコ・ヘミングがベスト盤「COLORS~カラーズ~」に収録した人気曲を中心に演奏するコンサートを16日、横浜市中区の県民ホールで開く。「いくら賞をもらうよりも、ただ観客のために弾きたい」と舞台に臨むフジコに話を聞いた。
若き日、欧州でのデビューコンサート直前に聴力を一時失い、苦難の日々を送ったフジコ。1999年、60代後半で出演したNHKのドキュメンタリー番組をきっかけに脚光を浴び、一躍人気ピアニストに。「NHKでは、放送後に反響の電話が次々にかかってきて、大変だったそうよ。私もあんなに騒ぎになるとは思っていなかった」と振り返る。演奏会が決まっても「レパートリーもまだなくて、大変だった」という。

以来、20年余り国内外のステージに立ち、第一線で活躍してきた。コロナ禍で公演が中止になっても、次々と予定が入って準備に追われ、「ほとんど休んでいない」と苦笑する。
2021年10月にリリースしたCD5枚組みのベスト盤「COLORS~カラーズ~」は、これまでに発表したアルバムなどから、2年の歳月をかけて自らが選曲した77曲を収めた。フジコの代表曲となったリストの「ラ・カンパネラ」は1973年の演奏会のライブ音源や、2021年の配信コンサートなど、複数のバージョンを選んだ。
「私の演奏会では、やっぱり『ラ・カンパネラ』を聴きたいというお客さまが多い。聴きたいものを聴いてほしいから」と、今回のコンサートでも同曲をはじめ、ドビュッシーの「月の光」といった名曲を弾く。
今回だけの特別な演目も予定している。演奏中は手元の映像が舞台左右のスクリーンに映し出され、どの席からも楽しめる演出が行われる。

「シューマンは『ピアノがうまくなりたければ、合唱団に入って歌いなさい』と本に書いている」と言い、歌うように弾くことを大事にしている。「ぶっきらぼうに弾いたらつまらない。私の演奏から『歌声が聴こえた』って言ってくれた方がいて、すごくうれしかった」
横浜は、ドイツで生まれたフジコの思い出の地だ。母はピアニストとしてベルリンに留学。画家で建築家としても活動していたスウェーデン人の父と出会って結婚し、フジコが誕生した。
1930年代の初め、一家は日本へ移住し、横浜大さん橋に降り立った。だが、外国人に対する排斥運動が激しくなるなど、戦争が暗い影を落とす。「父は横浜から貨物船でスウェーデンに帰国しました。レコードをかけてダンスしたのが父との唯一の思い出」

ピアノを教えて生計を立てた母は、フジコにも厳しくピアノを教え、練習に追い立てた。「一日中怒鳴られていた」が、ピアノさえ弾ければ、将来食べていけるという親心からだった。
演奏中は「何も考えず、集中している。止まらないように。だから、演奏会が終わるとくったくた」と打ち明ける。それでも、毎月何本もの演奏会をこなしている。「先が長くないので、『やっちまおう』という気持ちでね」と笑った。
ソロコンサート「〝COLORS〟~色を付けるように弾く~presented by WOWOW」:午後6時開演。S席1万2千円、学生席6千円。問い合わせはキョードー横浜、電話045(671)9911(平日午前11時~午後3時)
2023年1月1日公開 | 2022年12月23日神奈川新聞掲載
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