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神奈川ニュース映画協会の歩みを一冊に 元tvk記者が出版

かつて、県内の映画館で本編の前に上映された短いニュース映画「神奈川ニュース」を覚えているだろうか。製作は、県の外郭団体「社団法人神奈川ニュース映画協会」。2007年の解散までの57年間で、行政に委託された記録作品も含め5千本以上を手がけたとされる。協会の歩みを元テレビ神奈川(tvk)記者の細見葉介(39)がまとめ、今月書籍として出版した。細見は、日本のドキュメンタリー映画にとって「協会が果たした役割は大きかった」と話す。
神奈川ニュースは約4分間の映像で、行政広報として県の施策や県内の風物を取り上げた。冒頭には神奈川県民歌「光あらたに」を編曲したオープニングテーマが流れ、35ミリフィルムで撮影された画質は、映画特有の味わい深さがあった。
学生時代、映像制作のサークルで作品を作っていた細見は「小学生時代から映画館で神奈川ニュースに親しんだが、改めて学生時代に見たとき、昔の作品のような画質に興味を持った」という。04年には協会を見学し、長編映画と同じカメラで撮影している様子に「感動した」と振り返る。
やがて協会は解散したが興味を持ち続け、資料を調べ始めたが断片的な情報しかなかった。3年ほど前、協会が撮影した作品の上映会に参加したことを契機に、本格的に書籍にまとめようと仕事の傍ら休日を使って関係者の取材を続け、調査にも本腰を入れた。
行政文書や新聞記事などの紙の資料は残っていたが、図書館などで検索しても出てこなかったり、目録が不完全だったりと肝心の映像作品を探すのは大変だった。とはいえ700本以上を鑑賞したという。
同様の組織は全国に存在したが、同協会の存在感は際立つと細見は話す。「ほかの自治体の組織は小規模で、自治体職員が担う例もあった。だが神奈川は、映像業界に人脈がある人が関わったことなどによって、東京で活躍していた映画作家や前衛的な作品を世に出した監督らも参加した。協会が日本のドキュメンタリー映画に果たした役割は大きい」。現在も、交流サイト(SNS)では神奈川ニュースに対する書き込みを目にするという。
神奈川ニュースは、当時の行政の考え方を知るとともに、今は失われた行事や人々の生活の記録を知ることができる一級資料だ。細見は今後も、「今回調べきれなかったことを引き続き調べたい」と話している。
書籍「神奈川ニュース映画協会の時代 1950~2007」は四六判、167ページ、2200円。協会の年表なども収録している。問い合わせは、なまためプリント内公孫樹舎、電話045(641)8080。
2023年3月20日 | 2023年3月20日神奈川新聞掲載
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